機材レビュー「Ik Multimedia ARC System」★★☆☆☆

2011年9月にレコーディングを半分終え、Sonarのバンドルで音圧を上げることへの限界を感じはじめ、ソフトを探してWavesとT-Racksに絞り込んだ。
その後、Wavesが当時64bitに対応していないことに気付きT-Racks一択に。
ところが、年に数回やるらしいIk Multimediaの割引キャンペーンが終了したばかり。2011年秋のものはかなり美味しかったらしく、数日遅れただけで2~3倍の金を出すことに萎える。

一方、Ik Mulimediaには、既に同社製品を持っている人がIk製品を買い増しすると、Upgradeのような感じで割引を受けられるCrossgradeという買い方があることを知る。
それでもなおディスカウントキャンペーンより割高だが、大波に乗り遅れたのだから仕方がない。高価な部類のT-Racksの前に何かを買ってCrossgradeを使うことにした。

ソフトだと、箱付きの正規輸入品と、直販サイトのダウンロードとの価格差が大きすぎる。
T-Racks以外に惹かれるソフトもなかったので、ハードに絞って物色。
これまで存在すら知らなかった音響補正ソフト+マイクのARC Systemに決定。ネット上の評判が良いので大期待。

前置きが長い。さてレビュー。
まず、専用マイクで部屋の環境をサンプリング。時間はかかるが簡単。
サンプリング結果をもとに、自分の部屋用の音響補正値が自動設定される。
この補正値を、DAWからプラグイン形式で呼び出して使える。便利。
他のブログなどで紹介されているように、如何に自分の部屋の音響が不適か分かるのは楽しい。
これまで謂わば「目盛のズレた計測器で測量」していたので、フラット補正を通して聴くミキシング済みの音源にショックを受ける。

ここまでは良かったが・・・不満噴出。
ARCがイコライザーで補正するので、マスターボリュームが変化してしまう。
結果、ARC環境下でミキシング&マスタリングをした後、さらにマスターボリュームの調整が必要になって面倒臭い。

また、同社製のT-Racksもそうだが、動作が重い。
さらに、ARCを使ってマスタリングしたものと元の音を、複数のプレイヤーで聞き比べたところ、制作中に憶えたほどの変化は感じられない。
プレイヤーによっては、元の方が良かったり。

その後、スピーカーを新調し、部屋の音響を考慮して配置後、ARCを使ったら補正量が大幅に減少。
ARCにお墨付きをもらって、晴れてARCを使わないことを決定、という皮肉に。
やはり、ソフトを使って小手先で対応(一番の不満はココだったかも!)するより、本質的な解決を目指す方が精神的にも気持ちが良い。
しかし、ARCが無ければ改善度も測れなかったので、用途は異なれど役には立ったかな。

ハイスペックPCを持っていて、部屋のレイアウトを容易に変えられない人にはオススメ、かも知れません。
が、ヘッドフォンを買う方が役に立つかも知れませんね。ということで評価は辛目。

2012/5/30