1. 偏時空タクシー

アナログ無線のザラザラした声が 知らない地名で空気を震わす 
後部座席の広い暗がりにもたれ 夜の嘘のショーを見る

偏時空タクシーは 今日の端をスタートして時を越え
明日の端に僕を降ろして 暗い夜道に消える

証明写真の年老いた顔が 思い出せない誰かに繋がって
火花を散らして回路を燃やして 熱を残して僕は罪を負う

偏時空タクシーは 夢の端をスタートして空を跳び
現実の端に僕を降ろして 暗い夜空に消える

偏時空タクシーは 喧騒の端をスタートしてギアを変え
静寂の端に僕を降ろして 暗い夜雨に消える

2. 六等星

埃被った古びたスニーカーに足を通し
急に走ったり 道端に座ったり 大きな子供
六等星 朱の空に霞んで もう1度 人知れず輝け

HBの鉛筆 真っ白な紙の上を 右へ 左へ
気に入らなければ 丸めてゴミ箱へポイ 大きな子供
六等星 月明かりに隠れて もう1度 背伸びして輝け

すぐに泣いて またすぐ笑い出す 土曜と日曜
今日は早く寝て 明日は固い革靴とスーツの子供

六等星 朱の空に霞んで もう1度 人知れず輝け

3. いつの日にか

こんな時は 愛や命を 言葉にして
語るのが良いかも知れないけど
僕にもよく分からない

その想いを忘れないように
まるで自分に言い聞かせるように繰り返すけど
忘れるのは悪くない

あなたにとって 波が寄せて返すのが
穏やかな景色になりますように
いつか いつの日にか
春を待つ季節の 最後の雪で
遊び疲れて眠れますように
いつか いつの日にか

擦り剥いた膝が癒えるように
胸の穴は傷跡を残して閉じるけど
夜は古傷が痛む

お祭りの短冊に わがままな夢や
青い恋の行方を 願えますように
いつか いつの日にか
こらえきれず流れた一筋の涙が
たった今だけのものでありますように
いつか いつの日にか

4. 電気のレシピ

土曜も日曜もない 休みの日が続いて
のんびりもできずに 悲しんだり張り切ったり

誰かが電気のレシピを盗んで
街中の夜が 真っ暗になれば
皿の上 全てがご馳走になって
これ以上ないバースデイパーティ

遠くで水を汲んだり 大きい方のパンをあげたり
君を守りたい僕に できることは少ない

誰かが電気のレシピを盗んで
ストーブの残り火が あっけなく消えれば
僕らの体が 代わりになって
抱き合ったまま お休みママ

逃げよう どこまでも 留まろう いつまでも

誰かが電気のレシピを盗んで
ありふれた朝が はじまりになれば
つないだ手が また隣につながって
競うように祈る ラブ&ビース

誰かが電気のレシピを盗んで
見慣れた夜が 真っ暗になれば
僕らは慌てて 闇に手を伸ばし
思ったより近く 君に触れる

5. 夕焼け号

夕焼け号は真紅の列車 R60レイティング
都心の地下 海のトンネル どこでも行く
今夜のディナーは仔羊のソテー
若い肉汁は血と汗と涙

夕焼け号は眉雪の内装 巨万の富も乗車中
保険の効く特効薬・延命薬
酒の肴は仔牛のブランケット
添え物はビタミンA・B・C・D・E

充実の1週目
想定内2週目
左うちわ3週目
記憶のない4週目

今夜のディナーは仔羊のソテー
五本指の仔羊のソテー
酒の肴は仔牛のブランケット
五本指の仔牛のブランケット

6. 君をいつか

君をいつか この手で暖めて 古巣へ帰す
君をいつか 見慣れた明日の見える 毎日へ帰す
嘘も 信じた言葉も 同じくぼんやりしている
暖かい料理を食べたら 無理に笑って また眠った

君をいつか 海と空の見える 古巣へ帰す
君をいつか 無知でいられる 毎日へ帰す
会話も 歌も 無言も 同じく鳴りを潜めてる
夜ごとフォークで刺したら 時計を見上げて また眠った

時がいつか 石灰の線を 雨風で消す
時がいつか 諦めよりも先に どうでもよくする
天気も 視界も 疑問も 来る日も来る日も晴れない
願いが雨で流れたら 熱も冷めて また眠れる

君がいつか 見えなくなるまで 遠ざかるまで
君がいつか 僕の記憶から 消えてなくなるまで

7. 七色グラフィティ

チャレンジはあっけなく
神様は他で忙しく
失敗も悪くない
ハズレくじの裏に書き殴ろう
七色グラフィティ

最後の100mだ 駆けて 風を受け
涙が乾いたら お腹が減る
おやつの時間

主人公は生欠伸
羅針盤の真ん中を揺れる
迷子になったら
地図の裏に君の道を描こう
七色グラフィティ

ゴールまで100mだ 駆けても遠くて
転んで 擦り剥いても また立ち上がれ
傷口を手当てしたら お腹が減る
おやつの時間

8. 夜祭の金魚

君の夕飯に興味はない
金魚の飼育に興味がないように
電気作りに興味はない
100年先は誰か上手くやればいい

夜祭の金魚が死んですぐに君は去った
あれこれ無関心な僕に課せられた罰は
疑うこともせず座席も道も譲った
間接ほう助への実刑 さようなら

“大切なのはきっとこれじゃない”
僕の直観は赤く錆びてるのに
“暇つぶしに付き合う気はない”
ちっぽけな自信は頭の病気なのに

夜祭の金魚が死んですぐに君は去った
上から選り好みの僕に残された道は
甘い言葉の裏もとらずに取引をした
間接従犯への実刑 カタストロフィ

9. 引っ越しダンボール

息を潜め二百まで数え 遠ざかる足音が消えるまで目を閉じる
廊下に積み上げた 引っ越しダンボールの 向こうにある春が 君だけを待ってる

僕の無関心が生んだ水溜りは今や水平線しか見えない
4年の上に蓋した 引っ越しダンボールの 真新しいにおいが 僕を置き去りにする

loading...回転する砂時計 雪と桜が何度も交互に降り積もった
部屋の隅で褪せた 引越しダンボールは ガラスで出来ていて 中身がよく見える
ショーケースのように 中身がよく見える 真っ暗な部屋でも 中身がよく見える

10. 三十六度の沸点

Mr.unknown
いつか心を震わせた 忘れもしない誰か
記憶は冷え切った躯体 震える裸足
冷房をオフにして 節電の真似をして 真夏日

抑揚のない 汗が流れた
名前以外も すべて流れた
三十六度の沸点を越えた

Superunknown
フラッシュバック
鼓膜に食い込んだ音から溢れた
記憶は紫のくちびる ずぶ濡れの髪
冷房をオフにして 扇風機をまわして 猛暑日

ためらいのない 汗が流れた
鼓動の盛衰が 音を掻き消した
三十六度の沸点を越えた

11. 透明な嘘

透明な嘘が 風に舞い 空に漂って
雨になり 大地に浸みて 根を伸ばす
誰かを信じる儚さを 僕らは両手で持て余し
戻れない日々を諦める

あなたを信じる もう1度
両手を合わせ 跪き 戻れない日々に手を這わす
君は家に帰る 透明な嘘を
許して 耕して また歩き出すために

12. このゆびとまれ

1人の春だ 生ぬるい風は 3月の方から吹いてる
眠れない夜だ 君から誘いの電話がきそうな気がした

「このゆびとまれ」と心に届いたから 僕は夜通し走り
いつかの校庭で 君の親指を探す

騒がしい春だ 耳を塞いで 季節が過ぎるのを待ってる
振り返るには あまりに近くて 懐かしいなんて 大げさすぎて

「このゆびとまれ」と心に繰り返すから 僕は覚悟を決めて
海の見える丘で 墓標に君の名を探す

13. ヤサグレの丘二丁目ニュータウン

これから君の待つ 小さな家に帰る
見知らぬ街の郊外 ヤサグレの丘二丁目ニュータウン

雨も蝉も風も どれも少しずつ違う
冬を火にかけた 暑いだけの夏

空を分かつ高圧線 あの日と今日を結ぶ
写真の待つ僕の家 ヤサグレの丘二丁目ニュータウン

道も土も空さえも 不自然に新しい
風が吹けばめくれて 舞台裏が見えそう

誰かが嘘をついて 嘘が本当になって
熨斗つきお詫びの品 ヤサグレの丘二丁目ニュータウン

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